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【準々決勝❸】2戦連続の毎回安打!!初顔、南瀬谷“旋風”なお

2026.09.24 |更新日:2026.09.25 2026リポート
【準々決勝❸】2戦連続の毎回安打!!初顔、南瀬谷“旋風”なお

 難関の夢舞台「小学生の甲子園」である。初出場であろうと何回目であろうと、出場53チームから「8強」まで勝ち進んだチームとなれば、相応の実力や理由があって当然。坊っちゃんスタジアムでの準々決勝の第2試合は、それらも読み取れる好ゲームとなった。“旋風”は一日にして成らず――。

(写真&文=大久保克哉)

■準々決勝

◇8月11日◇坊っちゃんスタジアム
▽第2試合

両軍で20安打、守りは粘り強く

[神奈川]初出場
南瀬谷ライオンズ
 100102=4
 000012=3
オール富山少年野球クラブ
[富山]初出場
【南】船田、音村-山尾
【オ】吉岡、高木-安藤、番口
二塁打/古川(南)、吉岡(オ)、井村(南)
【評】南瀬谷が3回戦に続く毎回安打で先制、中押し、ダメ押し。終盤の富山の猛追を辛くもかわし、ベスト4進出を決めた。1回表、南瀬谷は一番・古川泰輔の左翼線二塁打と犠打、三番・馬場壮輝の右前タイムリーで1点を先取する。先発の船田虎太郎は無難に立ち上がり、3回には一死二、三塁のピンチも無失点で脱した。一方、富山の先発・吉岡伶王も粘投が光った。2回、3回と2安打されたが、あと1本を許さない。再び試合が動いたのは、グラウンド整備直後の4回表。南瀬谷の九番・村瀬嘉泰主将が中前打とボークで二進、続く古川の中前打で生還して2対1に。富山も2回から毎回安打で、ようやく得点したのは5回裏。七番・太田凱斗の右前打と犠打、九番・吉岡のテキサス安打で一死一、三塁とし、一番・舟崎充主将の初球に一走がスタート。挟殺プレーで2-4-3-6とボールが渡る間に、三走の太田が生還した。1点差に迫られた南瀬谷は6回表、二番・橋元涼のバント安打と足技で好機を広げ、ボークと五番・井村琉の左中間二塁打で4対1に。その裏、富山は二番・東鷹士朗、三番・松下侑奨、五番・高木源司のシングルヒットで再び1点差に迫るも、反撃はそこまでだった。

南瀬谷は古川の先頭打者二塁打㊤と犠打、馬場の右前打㊦で1点を先制

打たれても得点は簡単に与えない。富山・吉岡㊤、南瀬谷・船田㊦の両先発が4回までゲームをつくった

3回表、南瀬谷は一死二、三塁からスクイズ㊤。富山はローウエストで空振りを奪い、三走を挟殺㊦

1点リードの南瀬谷は4回表にようやく加点。村瀬主将が中前打㊤とボーク、古川の中前打で生還。富山は5回裏、太田の右前打㊦から好機を広げて1点を返す

6回表、南瀬谷は井村の適時二塁打㊤などで4対1に。その裏、富山は東鷹と松下の連打から無死二、三塁として、四番・加藤秀一郎の二ゴロと高木の左前打㊦で2点を返すも、後続は断たれた


 

―On-the-ground report―
16イニング連続ヒットと万全の対応術

“打ち出の小槌”とは、こういうものかもしれない。南瀬谷ライオンズの打線が、3試合16イニングをまたにかけての毎回安打を記録した(継続中)。

プロセスありきゆえ

 始まりは全国初陣となった2回戦の3回表だった。一番・古川泰輔が、チーム初安打となる中越え二塁打(=㊤写真)。それからこの準々決勝の6回表の井村琉の中越え二塁打まで、毎イニング必ずヒットが生まれている。その数は実に33本にもなる。


「初出場なので、もう攻めて攻めて。怖いものないので、どんどんイケイケという感じです」と渡邉記章監督。
 その柔和な表情や豊かなバイタリティは、チームを象徴するシンボルのよう。でも、ハイレベルな全国大会にあって、勢いだけでベスト4まで勝ち進めるものではない。まして16イニングも、ヒットが続くなんてありえない。


 結果として4強入りの決勝打、中堅手の頭上を襲う二塁打(=㊤写真)を放った井村は、こう振り返っている。「練習してきたことを生かして、それを信じて、絶対に打てると心に決めて打席に。(追い込まれるまでは)外角と真ん中のボールに絞って、センターオーバーを狙ったら、ちょうどそういうボールがきました」
 個々の打力の高さに加えて、打席で迷いが見られないのが共通した特長。また、ベストスイングを促すベンチの声掛けも特筆に値するものだ。

  

 渡邉監督はアイコンタクトやゼスチャーも用いて、各打者とやりとり。発する声はスタンドの応援にかき消され、カメラマン席ではなかなか聞き取れない。だが2回表の攻撃前には、はっきりとこう言っていた。
「(相手の投球は)低めが多いよ。(打席の)前に立ってもいいよね」


 命令ではなく、提案。理由を添えて選択肢を与えるのは、有効なコーチングスキルのひとつである。「日本一良い雰囲気と、日本一良い声掛け」を選手たちと標ぼうする指揮官には、ブレないスタンスがある。
「練習試合でも『このほうがいいよ』と、いう声掛けは意識的によく。それを選択するもしないも選手次第で、そこは任せます。それで例えば、低め狙いで打席の前(投手寄り)に立った選手がフライを上げたからって、それを責めるようなことがないようにしています。低い打球を打ちにいっても、上がっちゃうこともあるので」(渡邉監督)


 要するに、結果を求めないわけではないが、より注視するのはプロセス。そういう指導陣だから、選手たちは“指示待ちロボット”にならない。自らも考えてトライできるのだから、楽しくないわけがないし、向上心や発想もどんどん豊かに。そういう土壌の上にあるのが、彼らの無類の明るさとアグレッシブネスではないだろうか。
 井村のバットから決勝打が生まれる直前。バント安打から二盗、三盗、そしてボークで生還した橋本涼(=㊦写真)は試合後、「えっ? ボクがヒーローですか?」とおどけて笑ってから、しみじみと言った。
「愛媛に来てから毎日、ものすごく楽しいです」

一、三塁のピンチにて

 2回戦に中継ぎで15球を投じた船田虎太郎は、この準々決勝で大会初先発。5回一死まで69球で1失点と勝利に貢献すると、すっかり掠れた声でこう話した。
「自分のうしろ(救援)にエース(音村星茶)がいるので、バックを信じて投げ切れました。(3回戦で2本塁打の)相手打線が怖いとかは思わなかった。こっちはみんな守備がうまいので」

準々決勝は船田㊤から音村㊦への継投で逃げ切り

 確かに、準々決勝も野手はノーエラー。状況把握と連係もお見事で、それが1点差の勝利に結びついた側面もある。その際たるところは、走者一、三塁での守りに見て取れた。そのピンチは、4回と5回にそれぞれあった。

走者がいない場面の一コマ。三塁手の馬場(左手前)は打者を観察、二塁手の橋元は仲間に声を掛け(中央)、右翼手の音村は背後の特設フェンスとの間合いを確認(右奥)していた

 走者一、三塁になると、まずは正捕手の山尾燈汰から全員へブロックサインで伝達がある。そして4回は、一走のスタートに対して2-6-2と転送し、本塁を狙った三走をアウトにした(=㊦写真)。

 一連のプレーの中で、捕手の二塁送球のカットに動いた二塁手の橋元はボールをスルーし、それとほぼ同時に三走がスタートした。これに対して、二塁ベース付近でハーフバウンドの難しい送球を捕った遊撃手の古川が、即座に本塁へ好返球。古川(=㊤写真)のハイスキルに負うところも大の失点阻止&アウトだったが、マスクをかぶる山尾(=㊦写真)は試合後にこう話している。
「一、三塁の練習もよく? はい、結構やっています。みんなすごく守備がうまくて、送球が逸れたりしてもカバーしてくれるので頼もしい。いつも安心して投げられます」


  

 5回にも訪れた一、三塁の場面では2-4-3-6の転送で、スタートしてきた一走を挟殺。その間に三走の生還を許した(=㊤写真)が、2点リードの終盤戦であることから、アウトカウントを確実に増やすことを優先するサインや共通理解があったのかもしれない。

 ともあれ、どういう状況でも対処は心得ているように見えた。守る9人の落ち着きぶりからうかがえるのは、基礎スキルと経験値に野球脳の高さだ。639チームが登録(※2025年度)する神奈川県は、東京都の941チームに次ぐ、全国で2番目の大激戦区。今や登録500チーム以上は、この2都県しかない。そこを勝ち抜いてきただけの実力が、準々決勝でもいかんなく発揮されていた。

 
―Good Loser―
発足7年目、初の全国で確かな爪あと

とやま
オール富山少年野球クラブ
[富山県]

 2020年に、富山県で産声をあげたクラブチーム。オール富山少年野球クラブが7年目の今夏、初の全国大会でベスト8入りした。大躍進だが、準々決勝で敗退後の島村伸司監督はまず、こう言った。
「まぁ、全国で戦える実力があるというのは正直、わかっていました」

8月8日の1回戦で、宮城・富谷ストロングスポーツ少年団を5対4で破り、記念すべき全国1勝

 強がりではない。チームは46連勝中だった。この2026年だけでも78戦77勝という驚異的な勝率で、黒星は3月末の練習試合の1つのみ。しかも中条ブルーインパルス(石川)、茎崎ファイターズ(茨城)、野洲キッド(滋賀)といった県外の全国レベルの強豪とも複数、手合わせをしてきている。


 またそこまでキャリアを積めるのは、指揮官の実績と人脈があればこそ。島村監督はもともと、富山市の堀川ブルージェイズに親子で入団。息子の卒団後は専任の指導者となり、同チームが2度目の全国出場を決めた2015年は背番号29、同3度目の2017年は30番で監督を務めていた。
 そして全国初さい配となった1回戦で対戦したのが、現在も交流のある茎崎(2019年全国準V)だった。持ち前の打力を発揮するも、5対9で敗れた際に、島村監督は学区制の限界を痛感したという。
「私自身が経験した2回の全国大会は、どっちも初戦敗退。正直、小学校単位のチームが全国で勝つのは難しいと強く感じて、今のクラブチームをつくったんです」


 県外の強豪チームへ足も運びながら「クラブチームの運営」を学び、賛同者らと今のオール富山を立ち上げた。学区のシバリのないチームには、当初から志や能力の高い選手が集まり、みるみる成果をあげてきた。
「小学生の甲子園」とも称される全国大会(全日本学童マクドナルド・トーナメント)に出たのは今回が初めてでも、全国規模の他大会をすでに経験。長期の宿泊を伴う遠征試合にも慣れていたことが、今夏の躍進の一因だったという。
「ウチは当初から、1人がいろんなところを守れるチームをつくってきて、投手もたくさん。そこまでやるには苦労もありますけど、新ルール(1週間で投球は210球まで)も、どうぞどうぞ!!という感じ。誰が投げても、自分の持ち味を生かしたピッチングができる」(島村監督)


1回戦は東鷹士朗が先発㊤、いきなり1点を失うも2回から5回一死まで無失点の投球。髙木源司㊦は唯一、全4試合に登板した

 1回戦から3回戦までに、登板した選手は6人にものぼった。中でもチーム内で「優勝請負人」の異名もとる左腕、吉岡伶王が準々決勝で大会初先発。3回戦では開始から3連続アーチなど、強力な相手打線に毎回安打を浴びながらも、4回2失点の粘投でゲームをつくった。
 また打力も、相手に引けを取っていなかった。2回戦から2試合連続で2ケタ得点しており、3回戦では三番・松下侑奨と四番・加藤秀一郎がアベックアーチ。この準々決勝も2回から6回まで毎回安打で追い上げたが、あと1点届かなかった。


3回戦で一発を放った四番・加藤㊤は、準々決勝は1安打1打点。九番・吉岡は3回に左越え二塁打㊦

「自分たちは今まで、先制する試合が多かったので、きょうは先に得点されてしまって追う展開になって、いつもの感じでやれなかった面もあると思います。自分もチャンスで1本を打てずに、3打席ノーヒットという結果で終わったのが、すごく悔しいです」
 一番を打つ舟崎充主将(=㊦写真)は、そう言って唇を噛んだが、1回戦から3試合連続で2安打。2回戦では適時三塁打など、リーディングヒッターとしてもチームへの貢献は計り知れない。


「あと1本という場面での集中力というか、精神力がちょっとでしたね。チャンスで走塁ミスとか、打てなかったりでガックリしてしまったり。そういうところは、もうちょっと鍛えればよかったなとは思います」(島村監督)
 それでも選手たちには終始、結果や大人を恐れてプレーしている雰囲気はなかった。指導陣の分業制も確立されており、守備のフォーメーションや個々への伝達は主に、窪田亮コーチと大澤歩コーチが担当。島村監督はベンチに背を預けてワイドに戦況を追いつつ、攻撃のサインや細かな指示を出す。


「いつも自分たち選手のことを想ってくれる監督です」と主将が証言すれば、30番は日常の心掛けを打ち明けてくれた。
「叱るときはしっかり叱ります。その代わり、私が叱った選手には、コーチがその家族も含めてフォローする。逆にコーチがパッと言ったら、私がカバーする。そういうのは絶対に必要で、相手は子どもですから、どこかに逃げ道を与えてあげないと。『もう野球したくない!』と言われるのが一番嫌なので」


 初出場初優勝という、大きな野望は3つ手前のステージで断たれた。しかし、いきなり「8強」という爪あとを残した北陸の新興クラブ。その手に高円宮賜杯が渡る日が、そう遠くない未来に訪れたとしても不思議はない。


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